神戸で育った少年のころ、上京した大学時代、江戸川橋にある出版社でアルバイトをしていたころ。いつも辻山さんの傍には本があった。本の傍にいるときがいちばん自分らしくいられると思い至ったとき、彼のこれまでの人生が「本」という現象によって、ひとすじの道として浮かび上がる。幼い頃、初めて本屋という場所に感じた、「少し謎めいた、立ち寄らずにはいられない場所」に、いま辻山さんは毎日いる。そんな彼が本屋を営んでいることの奇跡と必然に、わたしはなぜか涙がこぼれそうになる。
開店から10年を迎えた東京・荻窪にある〈本屋Title〉の店主、辻山良雄さんによるエッセイ集。書評の名手としても注目される辻山さんが、これまでさまざまな媒体に発表してきたテキストに、新たに書き下ろしを加え構成された。イラストレーター坂本千明さんによる繊細でぬくもりある版画が、この本をいっそう親しみ深いものにしている。
「本がなくても人は生きていけるかもしれないけど、本がなければ人は人間たり得ないのであったーー。」
発行:信陽堂
発行年:2026年
サイズ:173×130 mm
ページ:208p