






「私が冬を愛する理由は百個ほどあるのだが、その一から百までがすべて"雪"だ。」と始まるこのエッセイは、雪の降る日のような澄んだ空気と、硬質な静けさを纏っています。オクタビオ・パス、フェルナンド・ペソア、パウル・ツェラン、シルヴィア・プラス…。愛する詩人たちの言葉を胸にひとり散歩に出かけ、思索を重ね、また日常へと帰っていく。悲しみも、痛みも、喪失も、その深淵に立った者にしか見えない景色があることを、彼女は知っているだろう。読みながらどこかへ歩いて向かっているような心地になる、珠玉の25編。
「愛するものを失ったとき、人の心は大きくなる。あまりにも大きいそこには、海もあれば崖もあり、昼と夜が同時に存在する。そこがどこなのか見当もつかないので、どこでもないと思ってしまうーー」
発行:書肆侃侃房
発行年:2023年
サイズ:四六判変型
ページ:152p