不穏な世界を予感させる言葉の羅列は、生者の声にも死者の声にも思える。曖昧な表現はかえって事態を悪化させ、残酷と無垢を併せ持った不可思議な何者かが浮かび上がります。それはかつての、そして再度表出しはじめた私たちの姿かもしれません。
計り知れない感情を背負ったまま風化していく世界を見つめ、現在に立ち続けている姿は美しい。言葉を抱えてひたすらに走る歌人、平井弘さんの第四歌集。
ずいぶんと忘れることができるものでたぶんまだ殴られてもいい
べつべつのひとを忘れていくのにどうして集まつてゐるのだらう
水たまりがいまを映してゐないこといつておくべきだつたかなあ
いいから戻して戻してこはされるところではなくもつとまへまで
発行:短歌研究社
発行年:2021年
サイズ:A5判
ページ:224P