しじみ、と思ったら、
自分の目が映っていた、
具のないみそしるを一口のんで、
両目を啜る、あじは、おれの刑期にふさわしく、
ざりり、と音までしやがったーーー
人や人でないもの、見えるものと見えざるもの、人知をこえた存在たちの声が聞こえてくる。夢だろうか前世だろうか、初めて訪れるこの場所を確かに知っている。立ち込める死の気配、肉体のくるしみ、生の忌々しさ。そのカタストロフを掬い上げる、緩みなく、険しく、美しい言葉たち。詩でしか近づくことのできない深淵にひとり立つ彼女がまなざす風景が、いま目の前に広がっていく。
発行:思潮社
発行年:2023年
サイズ:A5判変型
ページ:112p