手塚治虫さんの全集未収録中編作品。
長浜軽金属の専務取締役を務め、次期社長の座を目前にしている森山尚平。彼の旧姓は「趙」といい、戦時中に朝鮮半島から強制連行された過去を秘めていた。その記憶は出口のない、ながく暗い窖(あな)のイメージとなり幾度も彼を襲うーー。
戦前から戦後にかけての在日朝鮮人の姿を通し、忘却された歴史や差別の実態を克明に描き出した1970年の作品。「朝鮮(人)」というルーツの背後には無数の人生があり、一人一人が選択してきた道があり、それらすべてが戦後の日本社会をかたちづくってきた。であるならば、これは日本社会に生きる私たち自身の歴史でもある。そこのとを静かに伝える重要作。すべての憎悪と対立は悪であるという信念を持ち続け、それを作品に描いてきた手塚治虫さんの思いを繋ぐ、待望の復刻。
発行:法政大学出版局
発行年:2026年
サイズ:A5判
ページ:134P