まだ海外旅行が一般的ではなかった1969年に、夫・武田泰淳とその親友・竹内好とのロシア旅行を記した紀行文。星に驚く犬のような心と天真爛漫なまなざしで、旅中の出来事、風物、二人の文学者の姿が伸びやかに綴られています。自らの意思というより夫・泰淳について行くかたちでスタートした旅行。すでに楽しそうな夫に比べてなかなかテンションが上がらない百合子さん。それでも食べ物のこと、旅を共にしている日本人の様子、現地の人びとの服装や言動、トイレ事情などが詳細に記されています。百合子さんもそれなりに楽しんでいたのかもしれません。旅の肖像と時代が生き生きと立ち現れる無二の旅行記。
発行:中央公論新社
発行年:2018年
サイズ:文庫判
ページ:416p