小説は、理不尽な現実を直接変えることはない。凄惨な世界を前に、文学は何ができるのだろう。本書はアラブ文学者、岡真理さんによる、アラブの世界を文学の観点から見渡し、小説をを書くこと、読むことの意味を問い直した論考です。一冊の本を読む想像力は、見知らぬ土地の現実を、他者の生を、自分の経験として生きることができる。祈ることができる。そして、歴史に記憶されることのない小さき人々の尊厳への祈りは、救いとなる。
「小説を読んだ私たちは想像することができる。ーー小説を読むことで世界と私の関係性が変わるのだ。それはもしかしたら、この世界のありようそれ自体が変わるための、ささやかな、しかし、大切な一歩かもしれない。」
発行:みすず書房
発行年:2015年
サイズ:四六判
ページ:320p