戦争は、人びとの人生を激しく様変わりさせるのみならず、新たな説明が必要なほど言葉の意味をも変えてしまいます。バスタブ、スイーツ、記事、ゴミ、林檎。 日常的に使っていた何気ない言葉が戦争によって姿を変え、大切な思い出や美しいイメージが戦争と結びついていくようすが、人びとの証言から浮かび上がります。
ウクライナの詩人が避難者の体験を聞き取り、書き上げた、77の単語と物語。翻訳を担当したロバート・キャンベル氏による現地を訪ねた手記がおさめられています。
「圧倒的な暴力を前にして、たしかに言葉は無力かもしれません。ーー優しくもあり厳しくもある、限りない多面性を備えていることこそが、言葉の力ではないでしょうか。だからこそ、多面性に満ち溢れた現実に向き合うとき、言葉はいつでもまるで暗い部屋で身をすくめる私たちを探し出すかのようにして寄り添い、静かに立ち上がってくれるのです。」
発行:岩波書店
発行年:2023年
サイズ:四六判
ページ:286p