





「そんなことがあってたまるか、あの人を死なせるわけにはいかない。ぼくが自分の足で歩いていけば、あの人は助かるんだーー」
パリに住む親友、ロッテ・アイスナーの重病の報せを受けたヘルツォークは、自分の足で歩いていけば病は治る…と願いを掛け、真冬のミュンヘンを出発します。無意味とも思える過酷な旅はまるで巡礼のよう。死んでしまったような小さな村をいくつも通り過ぎ、雨や雹を受け、殺伐とした道を彷徨する。そして親友の元にたどり着いた時に交わされる夢のような美しいひとこと。
「窓を開けてください、何日かまえから飛べるんです。」
孤独と疲労に押しつぶされそうになりながらも雪と氷の世界をひたすらに歩き、世界をまなざし、自己と対峙する。ヘルツォークの狂おしいまでの想いが胸を打ちます。ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才による孤高の旅の手記。待望の復刊です。
発行:白水社
発行年:2022年
サイズ:四六判変型
ページ:154p