こちらの縮尺の感覚に不安を覚えるような大きさへの執着。自他の境目も、人間と虫の境目も、意識と実態の境目も、どれも判然としない。解体し暴かれゆく現実と、謎めいた不条理な物語が、どうしてだろう、強くこころを捉えて離さない。義弟とはだれなのだろう。はちがついつかとはいつなのだろう。すぐそばの世界の崩壊を予感させる、土井礼一郎さんの第一歌集です。
栞文:平井弘/大森静佳
貝殻を拾えばそれですむものを考え中と答えてしまう
ひからびた義弟たちを折りたたむしごとさ 驚くよ、軽すぎて
ほおぼねを指で辿ってゆく先におでん屋がある白い暖簾の
建て替えるたびに小さくなる家のいちばん奥に眠る父親
みな脚に小さなバネを埋められるどうしてもとりだせない軽い
発行:短歌研究社
発行年:2023年
サイズ:四六判
ページ:132p