女の子たちを主人公に描いた物語が5編。書店での出来事、花の名前がついている女の子、四姉妹の物語…。
まるでエッセイのように現実的であるのにどこか不可思議で、やわらかな語り口にするすると手を引かれるようです。決して悲しいお話ではないのに胸が苦しくなるのは、交錯する物語の背後に、常に本の存在を感じるからかもしれません。暗い帰り道にひとつだけ灯る街灯のようにやさしく、頼もしい。山口法子さんの幻想的な挿画と、チリなし上製本という少しめずらしい仕様が光る、うつくしい一冊です。
「ーー書店はきみが思うより、ずっと恐ろしく、ロマンチックな場所。そうだろう?海さんのサインが、私にそう、問いかけているようでした。」
発行:岬書店
発行年:2023年
サイズ:四六判変形
ページ:176p