どこか民話を聴いているような心地になります。かつて体験した世界ではないのにもかかわらずもう戻りたくないと思う、暗く荒んだ深淵。いったいどこまでがほんとうだったのかという不可思議さと、そこにいるなら無事でいてほしいという不安の中、立ち込める茉莉花の香りや、乾いた虫の死骸や、砂粒を踏む音が確かなことに救われる。
歌壇にとどまることなく活躍する千種創一さんによる傑出の第一詩集。
詩が本来持つ跳躍の力を感じます。
“鬣犬のやうに僕を尾いて来る感情があって
これが、後悔”
発行:青磁舎
発行年:2022年
サイズ:A5判変形
ページ:92p