愛も、死も、怒りも、悔恨も、救済も、霧に遮られ、輪郭がぼやけたままの日常に集約されていく。視界の先に見えるものたちが幻想に変わりゆく瞬間、つないだ掌に伝わる体温を何度も確かめるような310首。歌人・田村穂隆さんによる待望の第二歌集。
(装画:吉田紳平)
百合の花をタイヤみたいに駆動させこのたましいでどこまでもゆく
兄の歯は飴玉みたい月を削る黒い力を夜と呼ぶなら
境界は桃いろの雲 眼球にこの世のひかり食べさせておく
くらくらとこころを煮込む曇り日の首のうちがわには細い闇
連れ出してくれるのは誰 階段が口蓋垂のように赤くて
発行:書肆侃侃房
発行年:2026年
サイズ:四六判
ページ:144p