摑えようとした瞬間にぼろぼろと崩れてしまいそうなこころ、記憶、街。いつか砕けて地面に落ち、土に還ることがわかっていて、なお愛したものたちの姿を記した350首。危なっかしく頼りない、だからこそ丁寧に触れたくなるほどの、あまりに退廃的な装丁に包まれている。
歌集「砂丘律」「千夜曳獏」「あやとり」、詩集「イギ」などを発表し、歌壇にとどまることなく活躍する千種創一さんの最新歌集。
会えなくなった人を愛する こころを 壊れた椅子のように軋ませ
絡まったその日の糸をアラビアの文字へほぐして日記にちらす
やわらかいのが水、かたいのが硝子 ねむるあなたにふたつともある
傷を見抜けなかったことが傷となる 椿は路地に紅を降らせて
地獄でも、もちろん天国でもよくてあなたのいる方へ行く、桔梗を提げて
発行:青磁社
発行年:2026年
サイズ:188×108 mm
ページ:222p