微睡むような眠りのなか、しだい膨らんでゆく夢の大きさに怯んで針を刺すと、そこから現実が流れ込んでくる。夕暮れの給水塔や透明な野原、雨の後の匂いと自分に似た男、それらが漂う夢と現のあわいの出来事を静かに記した216首。やさしく少し寂しい空気が滲む、笹川諒さんの第二歌集。
ひどく疲れた日の夢だった 少年は翡翠になり皿にもなって
夕暮れになにか大きな荷物ごと遠ざかりゆく僕に似たひと
紙の船を待つという夢 港ではなぜかしあわせでしかなかった
行きたくて 海と砂漠と珈琲ゼリーの区別がどんどんなくなる旅へ
空自身が壊れぬように空がまだ試さずにいる一色のこと
発行:書肆侃侃房
発行年:2025年
サイズ:四六判
ページ:144p