



「これはわたしのおぼえている、おぼえていない、なかの、そとの、たくさんの記憶、によって書かれている。
わたしはそこにでてくるひとたちのことがすきだ。」
しだいに増えていくひらがな。昨日みた夢のような、幼い頃の思い出のような、断片的で、辻褄が合わない、瞬間の強烈なイメージ。記憶を精密に写しとればこんな感じだろう。文字を追うことで立ち現れる新しい調べ、懐かしい世界。「人間」というシリーズ名が説得力を持つ、無名の人間によるきらめく異色の小説集。
発行:新世界
発行年:2025年
サイズ:文庫判
ページ:80p