


母と兄を自死で亡くし、父も祖父母ももういない。身近に死を感じながら、多くの人が持つ家族観を得ることができないまま過ごしてきた著者の野口さんは、いつも現実をそのままに受け止め、自分の行く道を歩いて行く。強いのともタフなのとも、諦めているのとも違う。悲しみも痛みも喪失も、その深淵に立った者にしか見えない景色があることを、彼女は知っているのだろう。生きる力が湧いてくるということばが、こんなにも輝いて見えたことはありません。姿もなく、触ることもできない「生きる力」が身体の内に湧いてくるのを感じる、優しく凛とした言葉が綴られています。
文芸誌「USO」編集長、出版社rn press社主、野口理恵さんによる初のエッセイ集。
「私は、いつ、どこにいても、なにを食べていても、私ばかりがこんなにいい思いをしていいのかなあと考える。私のしあわせは、両親や兄は味わえないもので、生き残っているからこそ感じるものだーー」
発行:百万年書房
発行年:2025年
サイズ:四六判変型
ページ:224p