没後25年を記念して、歌人・永井陽子さんの歌集が2冊の文庫に編まれました。現実と確かに接触しながらも、目の前にあるものの向こう側を常にまなざしていた彼女の歌は、民話のように柔らかく、時に幻想的な景色を描き出す。そのいっぽうで、歌の中では軽やかにいようとするひたむきさが感じられます。美しい調べに再び出会う待望の作品集。
短歌における「私性」について特に意識的であった彼女は、作品によってその濃度が大きく異なります。本書では、私性と一定の距離が保たれた作品が「♯」に、私性の要素が色濃く感じられる作品が「♭」に収められています。
(♯)
このごろは秘密のおほきたなごころひらいてねむる睡蓮の夜を
まぼろしはそらよりきたる身にうすきいのにのやうな言語をまとひ
(♭)
人間といふ美しさ醜さのきはみのまつり見にゆかむとす
日曜はゆめの領域にて暮らしてのひらなどに書く「のりしろ」と
発行:短歌研究社
発行年:2025年
サイズ:新書版判
ページ:#240p/♭240p