"母が美しかったことやわたしを愛さなかったことは話したほうがいいでしょうか。影にも美しさは宿るでしょうか。あの母の娘を夜は愛してくれるでしょうかーー"
これは、一人の人間の成長のいくつかの断片を紡いだ物語です。他者や世界の不確実さ、父母との複雑な関係性、消えない不安と孤独から少女が逃げ込んだ、時に優しく、時に残酷でグロテスクな夢の世界。夜の言葉で紡がれた幻影、闇の中に広がる美しく歪な光景に、心が支配されていきます。今にも壊れてしまいそうな儚さのなかに、強靭な精神と溢れる想像力を宿した、アサイラム・ピースに続く異色の自伝的小説。現実世界を蹂躙する恐怖を生き続けるためには、こんなふうに安らぎを得られる場所を見つける必要があるのかもしれません。もういちど、現実の恐怖に立ち向かうために。
発行:文遊社
発行年:2024年
サイズ:四六判
ページ:248P