





これは、すべてが茶色に染まっていくある国の物語です。猫、犬、新聞、本、服装、そして朝までも。
陽の光がふりそそぐビストロでコーヒーを味わいながらそれぞれのペットの話をしている「俺」と友人のシャルリー。穏やかな、心地よいひととき。
けれども少しずつ、この国のひとつひとつを茶色に染めていく出来事が起こっていきます。
ひたひたと迫る少しの違和感。
どこかすっきりしないまま、それ以上考えないようにしている俺たち。
「俺」が、「いやだと言うべきだったんだ。抵抗すべきだったんだ」と悟るのは、シャルリーがいなくなり、すべてが手遅れになった、最後の朝を迎えたときでした。
30ページに満たないこの静かな寓話は、現代の日本社会に生きるわたしたちにとっても、決して無縁ではないと気付かされます。
絵:ヴィンセント・ギャロ
発行:大月書店
発行年:2003年
サイズ:四六判
ページ:48p