スコットランド北東部のケアンゴーム山群。
プラトーが広がり、湖や池が点在し、泉が湧くこの地に魅せられた著者は、生涯この山に通い続けました。彼女の登山は、高さや速さを競い、足跡を残すものではなく、ただ山の内側へと入り込み、そこに「在る」ことでした。
豊かな表現と美しい言葉によって目の前に広がっていく、山々の姿、深い森の香り、薄い霧のヴェール、ヨーデルのような雄鹿の鳴き声。
山の不変的な魅力が綴られた、静かな衝撃を与えるテキスト。彼女自身がしだいに山になっていくとさえ思えるほど深く山と出会う、自然と肉体の交感の書。
「これは育つ経験なのだ。特別なことなど起こらない日々ですら、欠くことのできない要素が書き足されていく。
ーー焦点が、ほんの一瞬、かちっと合わさる。そうして人はやっと、初めからずっとそこにあった言葉を読み取れるようになる。」
発行:みすず書房
発行年:2022年
サイズ:四六判
ページ:244p