






「うつむきがちなぼくにとって、この歌集は失くしたものへの愛惜を〈憤り〉にまでそだてる足場となるでしょう。」
失われることのない瑞々しさに胸が苦しくなるほどです。怒りも、悲しみも、喪失も、計り知れない巨大な感情を背負い、風化していくその様を見つめ、現在に立ち続けている姿は美しい。いつまでも色褪せない、こころに朗らかに舞い降りる歌たち。それは遥かな時間を超えたしなやかさと優しさでできている。
第一歌集 『顔をあげる』(1961年)、第二歌集『前線』 (1976年)を併録。
闇をどのていど重ねたらあれくらゐの火ならかくせるとおもふ
内側をつきあげられて生えかはるそれってつまりこころのことか
後ろで押すはうにまはっていいかなあ励ますつてやくそくします
発行:短歌研究社
発行年:2023年
サイズ:新書判
ページ:256p