






全78章から構成されるひとつひとつの章には、家の名前と年号が記されたタイトルがつけられています。
地下の家、ラジエーターの家、流れ出る記憶の家、平行の家…。
登場する人物には名前がなく、会話の場面もほとんどない。ゆえに、物語を読んでいるあいだ私たちは不思議な静寂に包まれ、家々が奏でるポリフォニーだけが微かに聴こえる。家々が物語る「私」の姿、生きてきた時間と空間。アフォリズムとも言えるような短文の連なりによって、ひとりの人物像が形づくられていきます。
発行:白水社
発行年:2022年
サイズ:四六判
ページ:332p