南フランスの蚤の市の片隅に置かれていた小さな箱。中にはうつくしい花の標本がひっそりと収められていました。作者の名前はポール・ヴァーゼン。おそらく100年ほど前、スイスやフランスの高山で採取された植物がていねいに台紙に配置され、小さな薄紙で留められていました。
1世紀の時を経てなお残る花々のかすかな色、指先の気配。添えられたテキストから蘇る植物のやさしい香り。かつて生きていたものたちの息づかいが聞こえてきます。
植物標本95点と、堀江敏幸さんによる書き下ろし掌編
「記憶の葉緑素」を収録。
発行:Little More
発行年:2022年
サイズ:四六判変型
ページ:148p