








人はふたつの文章を同時に読むことはできない。だから、上や下、縦や横や丸をページを行ったり来たりしながら読むことになる。放置されたもういっぽうのテキストに気持ちをひっぱられながら。注釈はいつの間にか主体性を持ち、散文となり、言葉は群を成して抽象の境地へと向かっていく。それは、祈りや救いかも知れません。複雑で、面倒で、美しい、素晴らしい詩群。
詩集にしてはとても大きいサイズだった初版よりもひと回り小さくなって、新装版が刊行されました。読むところがたくさんあるのがうれしい、そして読み終わってしまうことが惜しいと思える詩集です。
春はとおいなと思うばかりであった
ただただ水の音がしている
だけのたたずまいが文体のかたちをして
人たちに伝わるその仕方が
美しさというものなのかもしれない
発行:七月堂
発行年:2022年
サイズ:B5判
ページ:270p