スイスの貧しい家庭に生まれたヴェルフリは、幼い頃に両親と死別し、孤独な生活の果てに二度の逮捕を繰り返し、31歳のときに統合失調症と診断されました。その後亡くなるまでの30年間、精神病院の病室で創作をつづけ、架空の自叙伝や理想の王国の話、自らに宛てたレクイエムなど、25,000ページにおよぶ作品をのこしました。
線と渦巻き、楽譜や数字、幾何学模様でびっしりと埋めるように描かれた作品は、まるで自らの悲惨な境遇を塗り替えるように、緻密で、圧倒されるエネルギーに満ちています。
描くことでもう一つの人生を生きたヴェルフリ。彼が生涯をかけて創り上げた、この比類なき創造性を持った壮大な物語には、悲しみや憎しみをも祝福するような行進曲が高らかに響いています。
発行:国書刊行会
発行年:2017年
サイズ:257 × 210 mm
ページ:232p