






アラビア語には、「労働」「遊ぶ」このふたつの時間に収まらない第3の時間を意味する「ラーハ」という言葉があります。学ぶ、旅をする、ゆっくりお茶を飲む、おしゃべりをする、詩を書く…そんな時間。
この本は、トルコ・シリア・レバノン・ヨルダンなど、イスラム教国やムスリムが暮らす地域、その名残がある土地を陸路で巡ったひとり旅の日記です。騒乱の中にもちゃんと存在しているいつもの日常の中を歩き、食べ、眠り、また歩く。
がんばって働いたご褒美や対価としてではない、人が生きるうえでもっとも大切な時間とされている「ラーハ」を感じながら進む、厳しくも優しい異国の旅。
とりとめのない日常が何者かに奪われることなく、誰もが日々の営みを当たり前に享受し続けられることを願わずにはいられません。最後のページにある自宅の部屋の写真までたどり着いたとき、なんとも言えない充実感と切なさがこみ上げます。
発行:みずき書林
発行年:2022年
サイズ:A5判
ページ:144p