





アウシュビッツに送られ26歳の若さで命を落とした画家シャルロッテ=ザロモン。散文詩のように一行一文で書かれた(そのようにしか書けなかったと作者は言う)、ひとりの女性の短くも烈しい生涯の物語です。
身近な人たちの多くを自死で亡くし、自らも死の誘惑に駆られる彼女を、そして、次第に悪化する戦況の中の彼女を、それでもこの世に繋ぎ止めたのは絵を描くことでした。胸に秘めた豊かな情熱で不安の予兆を振り払うように創作に向かう、痛々しいほどに美しいシャルロッテの姿。彼女の健気な生命は、けれどもわずかな希望を目の前にしてあっけなく閉じられてしまいます。生命を削るようにして描き上げた700点もの水彩画から成る大作〈人生?それとも舞台?〉を残して。
鮮烈な詩情と計り知れない空虚をもたらす、心の琴線にふれる物語です。
発行:白水社
発行年:2020年
サイズ:四六判
ページ:342p