戦前の詩人、尾形亀之助の選詩集。
孤独に疲れたような、けれどかわいらしさを感じる短い詩の余白からは、静かな夜の気配や、音のしない真昼の風景、遠い街の喧騒がにじんでいます。
巻末に収録されている「泉ちゃんと猟坊へ」として子どもたちへ向けられた文章は、伝えたかった大切なことが愛情いっぱいに記されています。
ーー泉ちゃんは女の大人になるだろうし、猟坊は男の大人になるのだ。それは、お前達にとってかなり面白い試みにちがいない。それだけでよいのだ。
作品の合間には、同時代に活躍した画家、松本竣介のデッサンが添えられ、曇天のような鈍い青の装丁も美しい一冊です。
発行:夏葉社
発行年:2017年
サイズ:四六判
ページ:176p