太りぎみで汗っかき、レモネードが好きで、心臓が悪く、最愛の妻を亡くしてからは
なんとなくぼんやりと暮らしている、日刊紙『リシュボア』の記者ペレイラ。いたって平凡で頼りない人間の物語は、はじめは退屈なくらいのんびりと、しかしある若者たちとの出会いによって、恐ろしいほど加速度的に変転していきます。いずれの章も、"供述によるとペレイラは…"という一文で始まる、その言葉の意味するものが深く心に突き刺さるのは全文を読み終えたとき。「私の同志は私だけです」そう話すペレイラの言葉が重く響きます。
1994年、イタリアの政治的環境が右傾化した時期に発表されたこの本の舞台は1938年のポルトガル。ファシズムの嵐が吹き荒れ始める政治情勢を一人の視点から描き出した物語。タブッキにしてはめずらしくはっきりと政治責任に絡めて書かれた、彼の最高傑作といえる小説です。
発行:白水社
発行年:2000年
サイズ:新書版
ページ:194p