




1950年代ミラノの大聖堂の近くの小さな本屋、コルシア・デイ・セルヴィ書店。
時代に翻弄されながらも人びとが集い、豊かなつながりが生まれたその書店に関わりが深い、須賀敦子さんが綴ったエッセイです。
ミラノの情景が目に浮かぶ知性に満ちた瑞々しい文章。彼女の好奇心や想像力もまた、半世紀以上前の異国の人たちの物語をとても近しくしてくれます。
「私のミラノには、まず、書店があって、それから街があった」という文章からは、著者にとってコルシア書店がどんなに大切なものだったかが伝わってきます。
書店が緩やかに解体されていく中で、それぞれ新しい道を歩み始める人々。失意の中にもさわやかな風が吹いています。
「若い日に思い描いたコルシア・デイ・セルヴィ書店を徐々に失うことによって、私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れされたような荒野でないことを知ったように思う。」
発行:白水社
発行年:2001年
サイズ:新書版
ページ:236p