






主人公・芹川進くんの日記で構成される、聖書の言葉を引用しながら書かれた物語。
高い理想とそうはいかない現実。
葛藤、幻滅、空虚、希望。
繊細でプライド高く、素直さと鬱屈した感情がマーブリングされた思春期の青年の心情をみごとに描いています。
作者の姿を映しているのかもしれません。
「四十になっても五十になっても、
くるしさに増減は無いね。」
進くんの胸にどきんとこたえたこの言葉、同じようにどきんと胸にこたえます。
改めて読む太宰治の文章はやはりすばらく、すこし悔しいほど。それから、元気が出ます。
底本/1973年発行 新潮社「パンドラの匣」
装画/周依 (CHOU YI)
発行:ON READING
発行年:2018年
サイズ:文庫版
ページ:189p