立ち込める死の匂い、諦念の面影、生への切実さ。
頻繁に登場する「電車」に乗って、彼はどこかへ行こうとしていたのかもしれません。あるいはそれは、目の前をあっという間に過ぎてゆくものへのファイテングポーズであったのかもしれません。
厳しくせつない完全な言葉たちは、心の内にある靄のかかったあの場所にひとすじの光を放ち、遠く彼方まで届きます。
*2004年刊の雁書館版と2015年の双風舎版を経て、2018年、没後10年を迎える際に再刊されました。その後、2023年第三刷。
発行:皓星社
発行年:2018年
サイズ:四六判
ページ:236p