





作家・仲西森奈さんのはじめての歌集(とエッセイ)。
生きること、愛や性のどうしようもなさ、怒りや諦め。
張りつめた糸がプツンと切れて、どこか遠くへ飛んでいってしまいそうな危うさは、作者の持つ豊かな感受性と、かけがえのない日々へのこれ以上ない愛情のように思います。
少しきらめく表紙のシルバーや歌集なのに索引がついているところ、パタンと開けるコデックス装など、遊びこごろを感じるルックスです。
大切な人が眠っていて、寄り添うことができずにただ、自然と起きるのを待っている。そういう時間を誰しもが、人生で何度か、あるいは何度も経験する。
ーーー大切な人を見つめて見つめて見つめ続けて苦しみのあまり呻き声を上げても、涙や鼻水を垂れ流しても、手足の感覚が消え失せても、大丈夫。もう片方が眠っている限りにおいて、片方であるところのわたしは夢のような現実を見ていられるのだ。(本文より)
発行:さりげなく
発行年:2019年
サイズ:182×110mm
ページ:248p