世界各地の窓のふるまいを観察するこの本は、「にじみの窓」「眠りの窓」「窓の中の窓」など、それぞれの窓のふるまいに見合ったカテゴリに分けられ、気候風土や宗教的規範、建物の用途、窓と周囲の寸法のデータを、写真とエスキースとともに綴っています。
そこに収められているさまざまな窓の写真は、窓からの風や熱、その街の喧騒が紙面越しに感じられるほどにいきいきと美しく、豊かな表情に溢れています。
文中に「銀河鉄道の夜」の一文が引用されていますが、日常と自分の内部の隔たりの大きさが銀河へまでその鉄道の旅を導いてしまったように、窓は単に建物の内と外の交通を図るディスクロージャーというだけではなく、生と死、日常と幻想を超えた、はるか彼方の場所へと飛び立つ入口にもなっているように思えます。
闇を閉じ込め、光を操り、風を集め、空間を行き来する。計り知れないふるまいを持つ窓についての考察を巡らせるための、道標となる一冊です。
発行:フィルムアート社
発行年:2010年
サイズ:A4判
ページ:352p