舞台はブラジル・リオデジャネイロ。幼い頃に両親と死別し、厳しい叔母のもとで暮らしながら、タイプライターの打ち方を身に付けたマカベーア。彼女は無知ゆえに、自分が不幸であることも、孤独であることも知らず、自由という感覚も持ち合わせていなかった。語り手であるロドリーゴによって描かれていく彼女の輪郭は、次第にロドリーゴの輪郭と(あるいは作家自身の輪郭とも)重なり、奇妙な物語が紡がれていくーー。周縁化された者たちの社会での運命が描かれた、ブラジルの文壇でカルト的な地位を築いた謎めいた作家、クラリッセ・リスペクトルが最後に遺した小説。
ポグロムの惨禍を逃れたウクライナ系ユダヤ人移民としての背景、各地を転々とし続ける生活の不安、重度の火傷による身体的・精神的苦痛といった過酷な生涯がクラリッセ自身に深い内省を促し、難解ともいえる魅力的な作品を創出している。
発行:河出書房新社
発行年:2026年
サイズ:文庫判
ページ:176p