「旅とは、別の生に入っていく経験である。その土地の匂い、身体、空気、時間、言葉の訛り、まなざし、無関係な音に巻き込まれ、自らが形を失い、一つの地図になるような運動である。僕はでっち上げられた死んだ関係性ではなく、生きたままそれらと交わりたいと思ったーー」
地元の福岡で寺子屋的な学習塾を営みながら、文筆家としても活躍する鳥羽和久さんによる旅のエッセイ集。
ジャワ島、ハバナ、スリランカ、メキシコ、アッシジ、ドーヴァー、クレタ島…。旅先で出会った、ささやかながらも無二の出来事の数々を、著者と共に体験しているような味わいがあります。日常ではとうてい及ばない五感への意識、罪の実態、歴史の傷跡、一期一会の震えるような感覚。心奥に降り積もりった小さな出来事の断片は、やがて自分の日常へと根を伸ばしていく。他者と、世界と、共に生きることに想いを巡らせるような、新しい紀行文学。
発行:晶文社
発行年:2025年
サイズ: 四六判
ページ:246p