



オランダの植民地支配、日本軍による占領、独立闘争、60年代の大虐殺事件を背景に描かれる、美しい娼婦デウィ・アユの一族三代をめぐる架空の町ハリムンダの物語。
ここには、史実だけでなく、伝説や幻想や空想も含めたあらゆるインドネシアが詰め込まれている。暴力と悲惨さに満ち目を背けたい事実があっても、纏うのは奇妙とも言える明るさ。この混沌の物語世界こそが、インドネシアといえるかもしれません。連鎖する出来事は重く暗いものであるのに、淡々と俯瞰的な語り口に物語の凄みを感じます。インドネシア、マジックリアリズム文学の傑作。
発行:春秋社
発行年:2024年
サイズ:四六判
ページ:544p