生活史研究で知られる社会学者、岸政彦さんによる7年間の日記。パートナーのおさいさん、愛猫のおはぎ・きなことの日々が綴られています。 毎日の仕事、音楽、猫たち、親しいものの喪失、老いや死への不安。淡々とした筆致に、生きることの滋味深さが滲みます。
社会学者、というと、勝手に屈強な精神の持ち主のような気がしてしまいますが、不安定で、繊細で、なんだか今にもいなくなってしまいそうです。だからこそ、こんなにも他者(猫を含む)に寄り添う研究ができるのかもしれません。日常の中で見て見ぬふりをしている死や衰えや喪失に気持ちを向けてみようと思える、ひとりの人の生活の記録。 猫との日々を書き下ろした「おはぎ日記」を併録。
「ーー死だけはこの世界で絶対やな。 いくらカネを積んでもどんなに努力しても、絶対にきなこには二度と会えない。 折り合いのつかんことばっかりやなあ。」
発行:新潮社
発行年:2023年
サイズ:四六判変型
ページ:350p