「嘉十はにわかに耳がきいんと鳴りました。
そしてがたがたふるえました。
嘉十はほんとうにじぶんの耳を疑いました。
それは鹿のことばがきこえてきたからです。」
忘れた手拭いを取りに戻った嘉十が見たものは、手拭いを囲んで話し合う鹿たちの姿でした。
人間の知らないところで交わされる動物たちの言葉と姿。自然と人間との交信が、東北の言葉とともにテンポよく語られます。
地域の平安と悪霊の退散を祈願する、岩手に伝わる伝統舞踊「鹿踊り(ししおどり)」を愛した賢治が、特別の思いを込めて描いた傑作。
風や光までをも描き切るミロコマチコさんの絵が、神々しいほどの生命を伝えています。
発行:三起商行
発行年:2018年
サイズ:260 × 250mm
ページ:40p