人間中心主義から、生物圏平等主義への転換を目指した生命共生国家が、人類史上まれにみる人間への凶暴さに帰結したのはなぜか。ナチスの「農本主義」の特徴は、グロテスクな人主主義と、自然保護や有機農業の思想が、表層的であれ、一種共存していた事にありました。ナチスの世界観は、自然世界や動物世界をどのように捉えていたのか。ナチズムとエコロジズムの「融合」ではなく「混淆」部分にのみ焦点を当てながら、丁寧に真のエコロジーの姿を探ります。
「それがどれほど暗鬱な過去であっても、歴史に学ぶという最低限の作業を怠ってはならない。」という著者の揺るぎない信念のもとに続けられた探究の書。このディストピアは今の日本の現実とそう遠いものではありません。ナチス農本主義から見えてくる生命観を同時代史の中で捉え直します。
発行:柏書房
発行年:2012年
サイズ:A5判
ページ:308p