




「実際の命綱やガードレールがどんなに頼りなくても、
人はなにかが、もしくはだれかが、自分の安全を守ろうとしてくれていると感じるときにのみ、人として生きられる。」
耐えがたい出来事によって受けた傷を認め、向き合うこと。どれほど医療が進んでも、傷ついた心を治す薬はなく、傷から逃れることはできない。けれども、傷を負ったその場所はじきに新たな皮膚に包まれ、きっと前より少しだけ強くなる。
旅のなかで思索をめぐらせた、臨床医による胸に深く染み込むエッセイ。自己の内なる海を見つめ、引潮の時にしか見ることができない景色の豊かさのことを丁寧に綴っています。
発行:筑摩書房
発行年:2022年
サイズ:文庫版
ページ:240p