





一攫千金を夢見て香港に住うタンザニア人をフィールドワークした本書。
中古車、中古家電のブローカー、天然石の卸売、交易人のアテンド、ときには裏企業までこなす豪胆な「起業家」たちの日常が詳細に記されています。
チョンキンマンションの人びとは、誰のことも信用しない、善人になろうともしない。それなのにだまされても、「あいつは今大変なんだ」と、懐深く受け止める。誰にでも起こりうる不幸を前に、助け合う人間を区別したり基準を設けたりしない彼ら。そこにあるのはゆるやかな相互扶助の関係でした。
「ついで」のペイフォワードという気楽さで他者とつながり、予測不可能な現実を軽々と乗りこなしていくようすはタフでエネルギッシュで優しい。洗練された社会経済システムとは異なる、人間社会の可能性を見つけられます。
発行:春秋社
発行年:2019年
サイズ:四六判
ページ:276p