







風土や歴史、土地に準えた言葉の中に微かに感じる他者の気配。詩人の目に映る風景は、暗くゴツゴツとして、澄みわたっています。
うつくしい寂しさをたずさえて、寡黙に、どこまでも生と詩と対峙し続ける詩人、栗原洋一さんの30年ぶりとなった詩集です。
ーーコーヒー店でわたしは不在の時を過ごしていた。遠去かる記憶。ボートでわたしはひとり青い海の上に出ている。波はなく海面は鏡のように滑らかに光り、わたしの記憶の世界を繰り返し写し出していた。やがてわたしはこの海面の鏡の反射の光りの中に入っていくのだな、と思った。
(海の鏡)
発行:書肆子午線
発行年:2019年
サイズ:A5判
ページ:64p