南インド・チェンナイの滞在先のキッチンで、使いみちのわからないものに囲まれて途方にくれた著者の齋藤さん。旅行者にとっていちばん遠い場所は、その土地の家庭のキッチンではないかと思い至った彼女は、南インドのキッチンをめぐる旅をはじめました。 キッチンでの会話や目にしたものについてのテキスト、キッチンの実測図とレシピ、スナップ写真とスケッチがまとめられたこの本は、調理の過程で漂う匂いや音、生まれた味、そして日常をそのままに記録しています。 自分と相手が生きるための日々の営みの場であるキッチン。そこには、複雑で豊かであたたかい物語がたくさんつまっています。 「牛乳パックの底ようなこの場所に座って、おしゃべりをし、チャイを飲む。それはとても穏やかな時間であったに違いない。このキッチンには思い出が詰まっている。もうキッチンとしては機能していないけれど、一人の男性を、遠いハワイからこの古く小さな街へと連れ戻してくるだけの力が、このキッチンにはまだあるみたいだ。」 発行：Blue Sheep 発行年：2018年 サイズ：B5判変型 ページ：224p