







室内と室外を往還する12の短文集。
読んでいるうちにしだいに揺らいでいく心情の正体は、いったいどこまでが内で、どこからが外なのかはっきりと区別できなくなっていく不思議な不安と、けれどその不安をちゃんとすくいあげてくれる安心感かもしれません。
空間の境界としてだけではなく、自分の体内や心の領域にも存在する「室内」と「室外」。
茹だるような外気の暑さと、思うように出かけられない鬱屈を爽やかにレシーブする一冊です。
「同じ人間が自分の知らない場所ではまったく別の顔をもって生きているという人間社会の奥深さが、一瞬のうちに切り裂かれた隙間の奥に垣間見えたような気がした。」
(柏木の夜)
リズムを感じる素敵な挿画は、工藤夏海さんによるものです。
発行:カタリココ文庫
発行年:2020年
サイズ:文庫版
ページ:80p