「塩を食う」とは、塩にたとえられるべき辛苦を経験する者たちのこと、それから、塩を食べて傷を癒す者たちという多重の意味を持ちます。
人種差別と女性差別という多重構造の中、もっとも抑圧された立場からの証言。その狂気ともいえる歴史的体験のなかで、彼女たちを支え、生き延びることを可能にしたもの、その力はどこからやってきたのでしょうか。
力強く、みずみずしく生きる彼女たちが持つ、生きる意志、智恵、喜び。生き延びること、再生することを願う者たちの生存の根幹をみつめた記録です。
対象に寄り添いながらも風通しの良い著者の言葉にも、
しなやかな腕力を感じます。
『「生きのびる」という言葉を使うときには、肉体の維持のことだけをいっているのではないと感じていた。「生きのびる」とは、人間らしさを、人間としての尊厳を手放さずに生き続けることを意味している。敗北の最終地点は人間らしさを棄てさるところにあると。』
発行:岩波書店
発行年:2018年
サイズ:文庫版
ページ:270p