必要なものは景色のなかにあるーー。
都市の周縁をなぞるように並べられた言葉は、肝心なものには触れないままに、その景色の奥行きを明瞭にしていく。シナリオの中を動くような冬や雨や犬や鳩、幾度も登場するさまざまな乗り物は、どこか新しい場所へ向かうことを切望する切なさとノスタルジーを感じさせます。いつか訪れる終わりのための渾身の第一歌集。
外国はここよりずっと遠いから友達の置いてゆく自転車
あれが山、あの光るのはたぶん川、地図はひらいたまま眠ろうか
朝刊が濡れないように包まれて届く世界の明日までが雨
燃えるのは火曜と木曜と土曜。火曜に捨てる土曜の残り
発行:いぬのせなか座
発行年:2019年
サイズ:四六判変型
ページ:280p