



不穏な気配、へばりつくような湿度をまとった記憶の断片は、怖いものがいっぱいあった子どもの頃を呼び戻す。
夏の夕暮れ、プール、おまじない、鬼ごっこ。
静まり返った景色に響く遮断機の音。
絡みつく前世のような感覚は、わたしたちの視線を日常にふと存在する暗部へと着地させる。歌人・山崎聡子さん待望の第二歌集です。
西瓜食べ水瓜を食べわたくしが前世で濡らしてしまった床よ
夕暮れに六時を告げる音が鳴り昼間をすべてさらってしまう
非常階段の錆びみしみしと踏みならずいずれは死んでゆく両足で
手をほどく わたしのうちの風穴を埋めていたのはそれだったのに
発行:書肆侃侃房
発行年:2021年
サイズ:四六判
ページ:160p