古布の上を這うような糸の軌跡、螺旋状に連なる無数のステッチ。幾重にも重なる糸の群れは装飾や手芸の域を遥かに超え、過去から連綿と繋がる生命を思い起こさせる。
いつも機嫌が悪く暴力的だった父、家族の世話に追われ病に倒れた母。戦争のトラウマを家族にぶつけざるを得ない男たちを宥めながら、行き場のない感情を仕舞い込み、ただ針をすすめてきた女性たち。その溜め込まれた想いを託されたと思えてならなかった作者は、彼女たちの人生の続きを引き継ぐように、自らの中にある血脈に動かされるように、針目を重ねていく。そして女性たちが背負わされてきた歴史と対峙する。
世界各国で絶賛された作品集「PUNK」から十余年、刺繍アーティスト沖潤子さんの待望の2作目の作品集。
発行:文藝春秋
発行年:2026年
サイズ:A4判
ページ:240p